シュガーコーテッド毒キノコ

琴深は毒キノコです。お砂糖まぶしてあります。

英語コンプレックスを克服して趣味にしてしまった私の父の話。

この記事の方への応援の意味も含めて、私の父について書いてみる。





私の父は、英字新聞を読み、映画は字幕無し、吹替え無しで観るのが好きな63歳だ。



パスポート無し、海外旅行に興味無し、資格は英検もTOEICTOEFLも何もかも興味無し、仕事に役立てようとも思っていない。

ただただ、趣味として英語の作品や文章を楽しんでいる。
まさにコンプレックスを解消をした人と言って良いと思う。




父は学生時代、英語が苦手で、高校の英語系科目はおそらく五段階評価なら1か2といったところだった。

「資格を取るため専門学校に一年多く通った」とは聞いていた。

今年になって知った話では、
「残り英語1科目の単位だけで資格のランクが変わるからお前そのくらい取ってから卒業しろと先生に説得された」
「俺はその時は英語なんかやりたくないから即卒業でいいと思ってた」だそうで。

要は英語の単位落としたせいで留年をする羽目になったのと同じだったわけだ。

(そのときの資格を取得して卒業・就職してくれたお陰で、母はずっと専業主婦のまま、私と弟は私立大学まで行かせてもらえた。そのへんはとても感謝している)



私が知る限りの、父の現在の英語レベル。

  • 英字新聞は、JAPANTIMESならそこそこ読めている。
  • 小説は語彙力が増やせると言って楽しんでいる。
  • SFアクションのように難しくないレベルの台詞で進む映画はストーリーを追える。
  • 話す上で変なためらいが無いので、相手に一応通じる話が出来る。
  • 書くのは苦手。3単現のs落とす、時制の不一致など、かなり基礎的なミスが多い。ただ、通じないか通じるかで言えば、一応通じる。

このレベルなのに、いきなり、中1の1学期で出てくるような、it'sとitsの違いをいきなり私に聞いてきて私が驚いて口をパクパクしてしまうことがある。

「なぁ、この映画のここの台詞何度聞いても If I "were" you って言ってるけど 本当はなんて言ってるんだ? wasかamしか入らないとこだろう?」
「え、仮定法だからI were youでしょう」
「カテイホーってなんだ? 高校英語?高校の授業なんて聞いてなかったんだから知るもんか」


父は、学生時代は英語が苦手で嫌いだっただけでなく理数系の人間ゆえ、文系な私から見ると語学や文に関するセンスもない。



私の記憶にある限りでは、父が英語を学習し出したのは恐らく44歳か45歳の頃
まだVHSに録画した映画を、巻き戻しては聞いていたと思う。

職場に来ていたネイティヴスピーカーとの会話レッスンを週一度受けていた時期が少しあった。


簡単なレベルから始まり、英和辞典ではなく英英辞典で調べるようになり、ニュース記事のプリントアウトした紙に、調べたメモをいっぱい書き込んでいた。

映画をMDやらUSBやらに音声データとして取り込んでひたすら聞いていた。

中学英語をやり直す本とか、私はこうしてマスターしたとか、英語学習のこれは間違ってる、あれはどうだ、動詞をマスターすればいい、前置詞だ、いや違うなどなど…そんな類の本は、積み上げたら1メートルを突破しそうなほどの量を買ったり借りたりしていた。
(積ん読の人なので全部読んだかは不明。父の積ん読から面白そうな本を読んで身につけるのは私w)




とはいえ、海外経験ゼロのまま、父は英字新聞を辞書なしで読む人になった。


正確には、一度だけ海外経験はあるが、英語学習を趣味としている事から海外出張にいく数人のメンバー内に父を入れられた事があり、その時のヨーロッパ某国に一度行ったのが最初で最後。


今も父はパスポートを持っていない。
海外旅行にも興味がない。
ただ英語を読んだり聞いたりするのが楽しいだけ。
仕事に役立てようとも思っていない。
英検もTOEICTOEFLも、英語系資格は一つも受験した事がないし、父にはそれらの資格の魅力など無いようだ。


英字新聞を先にマスターした父にとっては、小説には知らない単語が多く、ボキャブラリーが増えるから楽しいそうだ。


きちんと学校で勉強した私とは違い、目標がそもそも就職でも資格でもなく、留学でも無い。

ただ、苦手だった英語を、苦手じゃないものとするのが達成だから、父は現在進行形で、それを達成しようとしつつある。


たとえばTOEICは文章が難しい文章が出るのではなく、あの量を読み切れるかで400点台を抜け出せる。
全部読み終わってマークシートを塗れば600点は行くはずだ。

その観点からすると、父の文章読解速度は非常にゆっくりだ。
でも、父はゆっくりだと思っていないはずだ。
早くすることを目標に置いていないから、読む速度について考えた事も無いだろう。


趣味でやっているから、父にとっては勉強ではない。だから飽きることも無いらしい。

今もゆるゆると続けているようだし、たまに面白い記事を見つけては翻訳に取り組み、ブログにその話を書いているようだ。





キャッツアイの歌詞
we get you mysterious girlをGoogle翻訳にかけておかしな事になっている、冒頭のブログ主さんも、
そのうち、「いただきよ(戸田奈津子風)」みたいな感覚で捉えればいいのかな?と、思える日がくると思う。



学校で習うのとは違って、自由な教材を選べるし、自分で好きな方法も選べる。
お金を自分で稼いでいる大人の特権だ。


大人になってから何かを学ぶって、自由だ。