シュガーコーテッド毒キノコ

琴深は毒キノコです。お砂糖まぶしてあります。

行動で伝える人の話。

かつて、カレセンという言葉があった。

分かりやすいから、カレセンなの?と聞かれたら、そうですよと答える。
三國連太郎児玉清が好きなのだから仕方ない。

何より私は、グランドファザコンだ。


私は祖父母とは離れて育った。
なかなか会えなかった。
津軽海峡を渡ったり、陸上を数百キロ移動しないと会えなかった。


母方の祖父は今月で91歳。

お酒飲まない、タバコ吸わない、ギャンブルも勿論しない。
規則正しい生活をし、勤勉で、穏やかで、真面目で、寡黙で、身だしなみはきちんと整える。人の嫌がる事は黙って片付けてくる。
東北のド田舎の、半農半漁の集落に住む人として、つましく暮らしてきた。誰からも嫌われない。

従兄のお嫁さんも「あのおじいさんを知ってたら結婚相手は見つからないでしょう」って言う。



巨人が負けると機嫌が悪くなり理不尽に怒鳴られる環境で育った私には、祖父の「怒鳴らない・不機嫌にならない」だけでも、素晴らしいと思っている。




終戦時に21の誕生日を半月後に控えた20歳だった祖父は、戦前戦中の日本を知っている貴重な人なのだけど、昔の話は聞いたことがない。

戦時にどんな徴兵をされどこに行ったのかも、全く聞いた事がない。
片耳は若い頃からあまり良くなかったが、それが戦時中そばで爆発があったかららしいと母から聞いたのが唯一の若い頃の話。



会いに行くと、「はぁ よぐ来だ」って嬉しそうに言う。
その一言だけで、祖父は喜んでいるのが良くわかる。



言葉って、なんと無力なのだろう。

祖父は、愛情を全て、あんなに無口なまま伝えてしまっている。

四人の娘を育てあげ、孫達を優しくみまもり、支えてきた。
スラリとした体型だが、半農半漁の家を支えてきただけに、船や道具を扱う時だけ見える筋肉は物凄い。働く人の身体をしている。



あの無口さをそのまま真似たとして、私の職種じゃ仕事が出来ない。
それに個人的に文章を読むのも書くのもストレス発散だから、私は、言葉に頼るのをやめられない。

だけど、祖父みたいに、行動であれほど伝えられる人には、かなわないって思ってる。

祖父が大好きだ。